単冠からブリッジ、フルマウスへ。
口腔内スキャナーはさらなる「精度」が求められる時代へ
——「Primescan」を初めてご覧になった時の印象をお聞かせください。
佐々木先生:
第一印象は、『かっこいい』なと。僕はワンビジットトリートメント(即日治療)が多く、患者さんと画面を見ながら一緒に設計もしますが、そういった時に、見た目の良さというのは大事なポイントになります。最先端医療を自分は受けているんだ、ということを患者さんに感じていただくためには、スマートでないとなかなか難しい。そういった意味でも「Primescan」は、100点満点の外見だと思います。
草間先生:
私は、デンツプライシロナという会社は、メディカルデバイスに対して造詣が深いなということを改めて感じました。トラックボールが無くなり、キーボードも無い。みなさまご存知の通り、キーボードは汚れが溜まりやすいですよね。「Primescan」は躯体全体的にも凹凸がなので、いわゆる清掃性が良い。メディカルデバイスとして非常によく考えられているなと思いました。
—— 先生方は日本発売前に先行して香港でトレーニングを受けられましたが、実際に使ってみた感想をお聞かせください。
佐々木先生:
最初に気になったのが、『カメラが大きくなった』ということですね。前機種の「Omnicam」は非常に小さく、日本人の口腔内に適していると僕はずっとそう思ってきました。この「Primescan」の『大きい』というネガティブポイントがどうなのかなと。
草間先生:
私は、デンツプライシロナという会社は、メディカルデバイスに対して造詣が深いなということを改めて感じまし「Omnicam」の場合は、トライアンギュレーション、三角測量ですから、軸壁などはカメラを垂直に当てる必要があり、小さいヘッドながらもこまめに動かすことが多かったんですね。でも「Primescan」は、ちょっと傾けるだけで全部撮れてしまう。結果、カメラを持つ時間が短くなりますので、実際にスキャンする時には、大きさを感じませんでした。
「大きい」そのネガティブは一転、ポジティブポイントに。
佐々木先生:
そうなんですよね。僕はスキャンから設計まで、全ての工程を自分自身で行うシステムなのですが、(月に)70本超えたくらいから腱鞘炎になったんですね。でも、この「Primescan」なら痛くならないのではと期待しています。手首の振りが少ないというのは非常にありがたいことですね。
草間先生:
香港で聞いたのですが、衛生士さんでも簡単に撮れるのだそうです。カメラとして、非常に撮りやすい、扱いやすいということは明らかです。
佐々木先生:
僕は実際に「Omnicam」を6年間使ってきまして、とてもよい機器だと思っていました。正直、ここからどうやってアップデートしていくのか、とても楽しみでもあり、不安でもありました。「Bluecam」(前々機種)の時は、不満な点が結構ありました。パウダーをしなければならないであったりとか、カラーじゃないとか、ヘッドが大きいとか、四角いとか。直してほしいポイントが非常に多くあったんですけど、「Omnicam」に関してはあまりなかった。このような現状から、「Primescan」はどう進化させるのかと。
「Omnicam」の場合、インレー、アンレー、べニア、クラウンを作っていくというのがメインの機器だったと思うんですね。もちろん日常臨床では、それで必要十分といえると思います。
「Primescan」は、やはりフルマウスの臨床ですね。ここに特化してきていると思います。僕は臨床的には、インレー、アンレー、クラウン、ベニアがほとんどを占めますが、もう1本の柱として、アライナー矯正があります。アライナー矯正をやるためには、ずれることなく精確に撮る必要が出てきます。そうすると、「Primescan」の出番ですね。
先ほど自身の口腔内をスキャンするデモンストレーションをやられていましたが、あんな感じでフルマウスが撮れてしまうんですね。この点については、すごく変わったなと、進化したなと実感しています。
フルアーチなどの大きな症例に「Primescan」の真価が発揮される。
草間先生:
私はインプラント症例をよく行います。最近は、スキャンボディを入れて撮影するというソリューションがメインですから、そこで「Primescan」が活躍します。
先日ある先生から、とあるメーカーのスキャナーを使って、インプラントのフルマウスの撮影をされたという話をお聞きしました。同時にアナログの模型も作って、「ほら、合わない」と。当然です。「Primescan」の5分の一程度の計測点のスキャナーで撮影して、それをオリジナルデータで出して、プリンティングすれば狂うのは当たり前です。
先ほど佐々木先生もおっしゃっていたように、インレー、アンレー、クラウン、べニアを作るのに、実はこの精度は要りません。今の「Omnicam」で十分です。しかし、その先にいく、インプラントのフルアーチのモデルを、例えばインラボのモデルビルダーを使って製作する。そういった、フルアーチのインプラントの模型を作るのであれば、「Primescan」レベルでなければ無理だろうと感じています。
—— 「Primescan」には、『デプススキャン』『ダイナミックレンズ』といった、深い被写界深度で撮れる新たなテクノロジーが搭載されました。深度は20mmに。この辺りも何か活用ができそうでしょうか。
草間先生:
それでは、ここからは実際に「Omnicam」にはできないけれども「Primescan」にはできるという例を佐々木先生と一緒にお見せしたいと思います。
インプラントのケースでは通常、フィクスチャーを「Omnicam」で撮ると、真っ黒で写りません。では「Primescan」は、どのくらい撮れるか。これはフィクスチャーが入った模型なのですが(下記写真参照)、この深さ、いかがでしょうか。被写界深度は20mmと聞いていますが、もう少し深い部分も撮れている感じがします。フィクスチャーだけでなく、中のスクリューまで再現できています。
そして、「Primescan」の粘膜のカット『AIスキャン』ですね。要らないものをカットしてくれる機能です。アシスタントが行う頬粘膜や舌の圧排が要らなくなるということですかね。粘膜が入ったり、リトラクターが入ったり、指が入ったりといったことはどうしてもあります。我々は今まで全部カットしてきたわけですが、これをしなくていいというのは非常に時間短縮に寄与すると思いますね。
指を撮るデモンストレーションも。「粘膜だけでなく、皮膚も撮れるんです。それだけ撮れているデータ量が多いという表れだと思います。」(佐々木先生談)
—— 口腔内スキャナーの役割は、今後どのように広がっていくのでしょうか。
佐々木先生:
単冠にとどまらず、ブリッジなど複数歯のケースまでもが、より我々の身近で使えるようになっていくと思います。「Primescan」は複数歯のケースで非常にパワーを発揮する機器ですよね。そして今後は、ますますフルマウスの方向にシフトしていくと思います。
草間先生:
将来的には義歯、ですね。もうヨーロッパの一部では、光学印象データから義歯を作るところまで進んでいますので、そう遠くない将来、粘膜を撮って総義歯が作れる日も近いのではないでしょうか。
講師